お忍びのアイドル

今朝、公園の噴水の前で、アコーディオンを弾いている人がいた。

足元の箱には、小銭がぱらぱら。中には、1円玉も入っていた。
お札は一つもなくて、どこかから紛れ込んだ落ち葉が、体を丸めていた。

誰もが襟をかき合わせ、素通りしていく季節。
アコーディオンの音も、風がかき消していく。
空気は音を伝えるのに、この差は何だろう?

コンビニエンスストアは、早くもクリスマス商戦のカタログを置いていた。
彼らの、一年に一度の晴れ舞台に、マンガ雑誌や新聞は道を譲っていた。
そこで、見つけた。マンガ雑誌の表紙によくある、グラビア。

あっ、この髪の色やこの顔は、もしかして!?

公園に戻ってみたけれど、その人はもう、いなかった。
一体、何を思って楽器を、こんなところで弾いていたのだろう。
CDでも出せば、あの箱が一杯になるくらいの、それこそ束になるお金がもらえるのに。

もしかしたら、あの人は箱を落ち葉で一杯にしたかったのかもしれない。
そうやって、少しでも内側の枯れ葉に、水を与えたかったのだ。
ぼくは、音が通った後の空気を、風が満たしていくのを、ただ見守った。

おしまい

前に作った、ボーイッシュなコーデが「あれ? ひょっとしたら、これってお忍びのアイドルに見えない?」と思ったもんで。水着の写真は、前の記事にも使っています。念のため。そこ、季節外れとか言わない!


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