ホラーゲーから学ぶ恐怖の定義
先日、あるホラーゲームをクリアしました。「Amnesia:The Dark Descent」です。
やばい存在の召喚に関わってしまったダニエルが、それを阻止するために迷宮(主に湿った地下)を、怪物から逃げまわりながら探索する、という内容です。
舞台は19世紀ヨーロッパ。錬金術や神秘主義が、まだ隆盛していた時代です。体力を回復する手段が「アヘンチンキ」なのが、これをよく表しています。
ダニエルには身体的な健康度と、精神的な正気度が設定されていて、どちらがゼロになってもゲームオーバーです。正気度という言葉にピンときたならば、もう名状したがいものが名状されてしまっていることに、お気づきかと思われます。
攻撃手段はなく、逃げるか隠れるかしてやりすごすだけ。ダニエルは三発も食らえば容易に死にますし、名状しがたい怪物を視界に入れただけで正気度は下がっていき、画面がぐにゃぐにゃ歪んでいきます。賭博黙示録カイジで、動揺した人物は世界がこのように見えているのかもしれません。
なんだかよくわからない冒涜的な肉
下水道……もう出てくるモンスターは決まったようなもの
花びら? いいえ鱗です
プレイしながら「恐怖とはなんぞや?」とか「ホラー映画や、ホラーゲームの定義ってなんぞや」と考えていました。
主人公がいよいよ決心し、武器(銃でも十字架でも)を携え、決戦に赴くならば、それはもはや勇敢な物語であって、恐怖などないのではないでしょうか。では、決意するまでに恐怖の要素があれば、それはホラーと呼ばれるのか。
はたまた、本当のホラーとは最後まで恐怖が持続し、主人公が決して救われず、死んだり狂ったりするのが通底しているのがホラーなのか。
ダニエルが怪物に抵抗する手段はありません。一応、最後に黒幕を葬って終わりますが、それですら銃でバンバン! ではなく、儀式の一部になっている塔を倒す、という方法です。
無力や絶望。恐怖やホラーは、それの言い換えなのでしょうか。それとも、最初から最後まで一貫して無力や絶望が存在している物語のことを、そう呼ぶのでしょうか。
ゲーム中、とあるアイテムを集める必要が出てきます。情報によると「聖歌隊」が使っている場所にあるとのことですが、そこに行っても見つけられるのは、上記のような拷問具です。名状したがい冒涜的な存在を召喚しようとする儀式で、拷問と聖歌……あああああ! そういうことかあああああ!!!
暗いとか、湿ってるとか、一言で言い表せない怪物とか、恐怖ポイントは色々とあると思うのですが、私が最も「ホラー」を感じたのは「拷問」と「聖歌」という言葉が結びついた瞬間でした。
まさに(うろ覚えですが)「人間の救いは、頭にあるもの全てを結びつけられずにいる点だ。無限に広がる大海のただ中、無知という名の平穏な島に住んでおり、はるかな航海に乗り出すべくいわれもなかった」でした。
平穏なほうがマシでした。だてに日本に住んじゃいなかった(オチ)。





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