【文字のみ記事】狩場には自分一人しかいなかったので、独り占めだった(本文より)

時候の挨拶は毎回のように同じ用語が用いられマンネリであるにもかかわらず、なぜ我々は飽きもせずに使うのであろうか。新語でも流行語でもあらず、辞典を引けば○○の候や○○の花が咲く頃、という言葉が、増えも減りもせず遺跡のように残っている。

似ているのは、天気予報における表現だ。たとえば四月になって暑ければ「六月並の陽気です」だし、十月くらいなのにもっと寒ければ「十二月相当の気温です」となる。

寒さが厳しいと、いわゆる生活に関する情報のテレビ番組でも雑誌でも、十把一絡げに言うのが「服を重ね着して、空気を着る」である。なるほど、一枚の厚い服を着るよりも、薄着を重ねたほうが層ができるので、より寒さを防ぐことができるというわけだ。

どこかのマンガで(すっとぼけ)人知を超えた化け物が噴火口に落とされ、甲殻を身にまとうことで耐えようとしたが次々に燃えてしまうので、今度は泡を着て防ぎ、生き延び、主人公の前に再び立ちふさがるという表現があった。

それと似ているのかどーかはわからないのだが、ドラゴンクエスト10のVer5.2ではレンジャー職に新たなスキルが実装された。「紅蓮蝶のきり」である。これはバトル開幕から使用可能で、効果は範囲バイキルト+まもりのきりである。攻撃力上昇と同時に、敵のブレスも防いでくれるというわけだ。

実際のところ、霧で炎や氷の息、毒のブレスを防ぐことが(なんかプロレスみたいだ)できるかどうかはともかく、ゲーム内ではできるのだから使わない手はない。しかも、レンジャーはブーメランのレボルスライサーや、固有スキルのケルベロスロンドで敵の被ダメを増やせる上、バイキルトやザオラルの呪文も使えるという、ほぼ万能の職ときている。

何が言いたいかといえば、魔界のドラゴンゾンビ・強に挑戦してきたのだ。

通常の打撃でもHPを8割ほど、ごっそりと持っていかれ、痛恨ならばその限りではないという強敵である。そのぶん、経験値も2万超と言わばお得なモンスターとなっている。しかも、最近はほとんどの冒険者がダークトロルを相手にしているので、狩場は閑古鳥なのだ。

ミソは、このドラゴンゾンビ・強が「かがやくいき」というブレスを吐いてくる点である。まともに食らえばパーティは半壊なのだが、ここで紅蓮蝶のきりが活躍する。一度とはいえブレスが無効化できるという事実は、相手がスゴロクで一回休みをするのに等しい。そして、吐かれたら吐かれたで、こちらは「まもりのきり」を使えば再びの一回休みを期待できる。

なお、ドラゴンゾンビ・強は「ルーンクラブクロー」を落とすので、経験値を稼ぎつつ装備ドロップも狙えるというオマケもついてくる。これは、やるしかない!

構成は自レンジャー、サポバト・レン・僧侶である。もしもの場合の保険として、火力職以外は全員が蘇生できる呪文持ちで固めた。

湧きは1匹ずつで、倒してすぐ次のシンボルが出てくる。狩場には自分一人しかいなかったので、独り占めだった。残念ながら、冒険者が集まっていないという事実は、そのものドラゴンゾンビ・強があまり旨味のないモンスターであるということの証左だった。

たまにMPが尽き、万魔の塔まで行っては回復し、ジャリムバハ砂漠の大甲虫の住処に戻り、北西に行って、死にそうになりながら戦い、2万ほどの経験値をいただく……自分の行動が、まさしく砂漠のごとく不毛に思えてくるのに時間はかからなかった。

たぶん、周囲に冒険者がいないのが一因だったのではないだろうか。デスディオ暗黒荒原あたりは狩場としては混んでこそいるものの、活気があるという側面もある。取り合いになるであろうし、ダークトロルの出現場所は満員が常だ。

一人で黙々とプレイするのはまるでオフラインゲームなのだが、望めば他人がいるからこそ孤独感や孤立感を覚えることもあるらしい。他人と比較しても意味などないが、手が届く範囲に果実があれば、どうしても酸っぱいとは思えないようだった(イソップ童話)

人がいるところに行きたい。空気を読むのは上手ではないが、ぬくもりが恋しい。

厳寒の候です。

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