「わかっちゃう」ということ フェイク込み

求められていたのは、香水を体中に吹きかけることだった。もしかしたら、腋の下にやることすら期待されていたかもしれない。

しかしながら、私は手首にやり、こすり、首周りにやった。

特に教えられたわけでもないし、そのような雑誌を意識して見たこともない。親とか兄弟姉妹とか、近所のおねーさんがやっていたのを見ていたわけでもない。だが、どこかで吸収していたのだ。

「脾臓」の「脾」という漢字があった。なんかファンタジーか錬金術関連で「卑金属」と「卑怯」というのは知っていたので「脾臓」のほうを書けと言われて、似た漢字である「卑」に、きっと「月」がつくんだろうなと予測した。体のことだから。論理的に。

「卑」は縦長だから「月」が上や下じゃないだろう。右につくか左につくかを鑑みた場合、右の可能性のほうがありそうだった。私は正解したが、評価は「こまっしゃくれている」や「かわいげがない」というものだった。

もっと書こうか。

答えを知る必要はないが、ルールは知ったり、察したりする能力は必要だと考えている。たとえば……。

ジグソーパズルを知らない人間の前に、どさりとその箱を置いてみる。すぐに、これは絵合わせのゲームなのだとわかり、周辺から埋めていったり、濃淡のある部分からはめていくのが容易いとわかる。

それが、ルールを察するということだ。

ゲームも似通っている。あからさまな殻を持っているボスならば当然(省略)。こっちの真似をしてくる敵ならば。おかしな玉っころを召喚するボスならば。攻撃すれば減るメーターは恐らくスタミナ。赤い数字はダメージで、青い数字は他のもの。

小説も同じだった。色々なジャンルのものを読んでいれば、一人称や三人称、はたまた二人称という言葉を知らずとも、大体そのような書き分けかたがあると知れる。直喩、暗喩もあるとわかる。

私は、この歳になるまで「地の文」という言葉は知らなかった。

他人にはあまり教わったことはないし、小説を指南してくれる本もディーン・R・クーンツの「ベストセラー小説の書き方」しか読んだことはない、と思う。

性教育も、小学校で一度受けただけだった。でも、ネットのそこかしこで言われている事柄の中から、信憑性のあるものを選び出し、なんとなく正しいものはわかるようになった。たぶん。

反応も大体わかっている。「自慢しやがって」「みんなそうでしょ」「無視してやろ」たぶんそうなるだろう。

パッチワークの端切れから、全体をみるのだ。そのせいで、ありもしない批判や、心ない言葉を自分で縫い合わせてしまう。画面と電波の奥で、仮想の敵を想像・創造してしまう。

だが、別に悪い精神をしているとは思わない、というか、思わなくなった、思わなくなれた、か? 同じような人がいるかはわからないが、同胞がいるなら心強いし、天然記念物みたいな珍しいものだってんなら、それはそれで。

わたしは、天然記念物という言葉を利用して自分を珍種であり、保護されるべきと正当化している。本当はガラパゴスゾウガメのジョージだと言おうとしたが、あまり知らない人もいそうだし、ひけらかしていると言われたくなかった。ジョージはジョージでも、おさるのジョージは独りではない。黄色い帽子。

うんうんうんうん、はいはいはいはい。あー、そういうことだったのか。じゃあ、あなたは他人といるのが好きだけど、たまに孤独になりたいと考えますね?

EOF

コメント